語られる出来事
非常に内容のあったかい本だと思いました。このような事はなかなか本にはなりにくいのではないかと思われます。というのも、語る方によって、非常に読むに堪えないものになりそうだと思ったからと、そうであるからこそ、本書のような本を手にとる人はすくないとおもったからです。詩人、童話作家の眺める世界観に、本当に心つかまされます。
おばさん、おじさんが「友だち」を語った本
詩人である著者が「友だち」について書いた本です。引越しも多かった中学や高校時代を思い出し、友人たちと話しながら書いた、ということですから、これは、おばさん、おじさんの「友だちってなんだろう、どうやって友だちができたんだろう」の本です。「中学のころから、ひとと出会うときは、とりあえずまるごと好きになる、というふうになってきた。」という一文があります。これがタイトルになっています。自分自身も含め、良いところも、苦手なところも、それぞれ違うけれども絶対にある他人とどうやって友だちとして繋がっていったのか。著者の場合はこれが秘訣だったといいます。ほんとうに「好き」というのは「嫌いな部分も含めて好き」という、とっても不思議なことなのかも、と改めて考えさせられます。 でも、友だちの作り方、でき方って人それぞれです。著者のお友だちの場合、も幾つか語られているので、「いろいろな友だちのつくり方、友だちのありかたがある」でいいのだとも本は伝えてくれます。読んで、「じゃあわたしはどうなんだろう」と考えてみること、が大事なのでしょう。 友だちの話だけでなく、授業中に間違った答えをした時に先生が上手に受けてくれたのか、かえってしっかり身についてしまったことなど、素敵なエピソードもいくつも転がっています。 著者の、人間以外との付き合いかたというのも書いてあり、これが彼女の詩のできかたなのか、と少し理解できた気にもなりました。引用されている「のはらうた」の「いのち」はわたしも大好きです。 大人も、「ああ、そういうこともあるんだよね」と楽しめる本。
まるごと世界が好きになる
「ともだちは海のにおい」を書いた工藤直子さんの本、ということも知らずに、「なんてきもちのよい本」と思いながら一気に読んじゃいました。題名の「まるごと好きになる」という表現が気に入って、作者の名前をぜんぜん見ていなかったんです。 どうして気持ち良かったかっていうと、自分が受け入れられている感覚が心地よかったんだと思います。帰国子女の母をもつ私は、「いいな、帰国子女は。だって、帰国子女っていうだけで、違っててもいいって理由が有るもん。私なんて、そういう母の子だから、違うけど、日本人のくせに、って違ってたらいけないって非難されるばっかりだもんね。」という鬱屈した思いを抱いていました。 工藤直子さんは、そんな感覚に無縁の感性で、新しい世界の見方をポンって投げてくれました。
誰かにとってよい友達になるには、その人をまるごと好きになるのがいちばん
大人になる過程で引越しが多かったせいで、かえって、ともだちの存在を何よりも大切に思う著者がともだちをつくる秘訣は、「まるごと好き」になる、ことでした。どんな人でも、まるごと受け入れ、まるごと好きなわけなので、いろんな人から、いろんなことをまるごと吸収している著者。インタ-ネットで広がった、A friend accepts what you are...を日本語にすると、このまるごと好きになる、になるのかな、と思います。何度本棚を整理しても、子々孫々まで読ませたいと思うために、ずっととってある大切は本のうちのひとつです。
筑摩書房
あ・い・た・く・て (小さい詩集) まちがったっていいじゃないか (ちくま文庫) てつがくのライオン (フォア文庫) 象のブランコ―とうちゃんと (集英社文庫) ともだちは海のにおい (名作の森)
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